1. 談話理解における解釈の構成と変更を推理小説の読解の場合について検討した。テキストは金田一少年の事件簿からとり、細部の一部異なる2種類を用意した。大学生2人を組にし、2種類のテキストのいずれかの第1部を読み、個人の解釈を書いた後、2人で話し合って共同見解を作ることを求めた。第2部から第4部までこの手続きを繰り返した。所要時間は2-2時間30分であり、7組のデータから次の結果を得た。(1)一番怪しい人物についての解釈は、読んだテキストによって規定されることがわかった。しかし、殺人の動機や一つのエピソードの解釈などについてはテキスト内でも多様であり、これまでの結果が確認された。(2)個人の解釈と共同見解の関係を3つのカテゴリに分類した。個人の解釈が同じで変更の必要がなかった場合、および互いに個人の解釈を主張してゆずらず併記した場合に比べ、個人の解釈に変更を加え共同見解を作る場合が多かった。とくに初期においては個人の解釈が共同見解作成の試みによって影響されることが示された。 2. 2つの意味を持つ多義語を含む文章材料を使って、大学生がどのように不整合を解消し、理解を修復するかを検討した。実験用の文章材料は、その同音異義語と間違って解釈されやすいターゲット語を含む先行文と最初の同音異義語解釈と不整合を作り出す後続情報とからなる。147名の大学生の実験参加者に、口頭で与えた短い文章材料を要約させ、次にターゲット語の解釈をテストした。その結果、大学生は不整合な情報を取入れて文章全体の表象を修正したが、ターゲット語の最初の解釈を変更することは多くないことが、不整合を作り出さない中性材料を与えられた大学生との比較で、明らかになった。
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