研究概要 |
言語表現の状況的使い分けの実態を探るために,次のような実験を行った.1.これまでにもデータの蓄積がある感謝表現については,感謝型(例:「ありがとう」),謝罪型(例:「すみません」)の使い分けに影響する要因をさらに詳細に検討するため,状況を統制したシナリオ実験を行った.話し手の責任の所在,聞き手の負担量と話し手の恩恵量,話し手-聞き手の親疎・地位関係を独立変数としている.現在結果の分析を進めている.2.応答表現「そうです」の使用に影響する要因を探るための調査を行った.現在,その結果に基づいて,質問の文型や品詞など,形態的・構文論的要因のほか,意味論的要因,また,話し手と聞き手との情報量の差といった語用論的な要因の影響を仮定した使い分けの枠組を検討中である.3.話し手の言及対象に対する態度と,言語スタイルの関連を検討する実験を行った.話し手の対象への態度と言及内容の望ましさが,表現の間接化に交互作用的影響を与えることを確認した. 一方では,言語的コミュニケーションの受け手が,様々な言語的スタイルの話し手についてどのような評価を与えるか,どのような印象を抱くかに関する研究も行った.Giles&Powesland(1970)等の実験パラダイムを援用して,音声を用いたコミュニケーションにおいて,話し手の知性や社交性,容姿などの認知へのスタイルの影響検討した. なお,以上の実験は本年度は名古屋地区で実験を行ったが,来年度は地域差についても検討を加える予定である.そのための準備も行った.
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