本研究の目的は談話能力の評価を行う際のタスクの違いによる結果への影響をみることにある。今年度は、昨年度、成人健常者20名を対象に7種の異なる談話タスクを行った実験結果を基に分析を進めた。また、追加的に10名の中〜高齢者について、データ収集を行った。この10名のなかには、5名、昨年度と同一の対象者が含まれていた。また、追加的にデータ収集を行った対象者には、どのタスクが話しやすく、どのタスクが話しにくいと感じたかについて感想を述べてもらった。以下の観点に基づいて結果を検討した。 1同一の刺激絵(一枚の情景画)を用いた場合、教示を「物語を話して下さい」とした場合と「説明をしてください」とした場合の差異について検討した。この結果から、発話時間、発話量、情報単位数といった、発話の量的側面、および発話のよどみの出現については、教示の違いによる有意な差は認められなかった。しかし、表出された情報が客観的か、話者の推測を含んでいるかという、情報内容の性質の点では、刺激絵によっては有意な差を認めた。 2同一の対象者群において、7種類のタスクの違いによる談話の量的側面および発話のよどみの出現の違いを検討した。この結果、全体で見た場合では、両者とも、タスクにより異なる傾向得られた。 来年度は、新たに採取したデータも加えて、タスクの違いによる談話の量的側面および発話のよどみ等の特徴の違いについての検討を進めるとともに、話題展開等の質的な側面についての検討を加える。また、個々の被験者について、課題の違いにかかわらず見られる一貫性はないか、2回同一のタスクを行った被験者については結果の一貫性が見られるか、の検討も行う。
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