本研究の目的は談話能力の評価を行う際のタスクの違いによる結果への影響をみることである。健常成人話者25名を対象に7種の異なる談話タスク、すなわち、2種類の情景画、4コマ漫画、テレビドラマを呈示して話す課題、3つの決められた語を用いて話す課題、2種類の手続きの説明を課題を施行した。情景画の課題については、「絵について説明して下さい」という教示と「絵について物語を話して下さい」という教示を絵によって変えて行った。手続きの説明課題は、課題のみを与えるものと、手順を示した漫画でを提示するものの2種類の方法で施行した。今年度は追加的なデータ収集を行い、25名のうち10名の話者については、約1年の間隔をおいて、同一の課題で2回ずつ施行を済ませた。 結果については、課題の違いによる差異、および被験者による傾向の有無の点から検討した。指標としては、発話時間、正確な情報単位数など、発話量・情報量を表す5指標、およびこれらの指標をもとに計算した、発話効率を表す4指標、情報伝達効率を表す4指標を用いた。結果として、発話量・情報量を表す5指標および発話効率を表す4指標、情報伝達効率を表す1指標において、課題の違いによる差を認めた。また、ほとんどの指標において被験者に固有の傾向がみられた。さらに、結果のばらつきの度合いについても検討を行った結果、ばらつきの小さい課題はテレビドラマ、大きい課題は3つの決められた語を用いて話す課題であった。 今後は、同一課題を2回施行した話者の談話について、1回目の談話と2回目の談話の一貫性を検討する予定である。
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