研究課題
我々は骨形成のメカニズムを解明する目的で骨芽細胞で特異的に発現する遺伝子としてOSF-2(昆虫のファシクリンIと相同分子)、OB-カドヘリン、AEBP-1(転写因子)、CD9などをクローニングした。これらの中でもOSF-2とOB-カドヘリンは骨芽細胞での発現が強く組織特異性も極めて高い分子である。そこで、現在OSF-2についてはその機能を調べるためにマウス骨芽細胞様細胞株MC3T3-E1細胞の培養上清6リットルからOSF-2蛋白の精製を行い、精製蛋白を用いて既存のin vivoアッセイ系で骨形成に於ける役割を検討している。生化学的解析からOSF-2蛋白はホモ2量体を形成し、OSF-2蛋白のみでは不安定であり、その安定性には60kDの未知の蛋白質との結合が必須であることがわかった。興味深いことにin vivoアッセイ系に於いては前骨芽細胞株を用いた試験でアルカリファスファターゼ活性を上昇させる活性を有することが認められた。また、OSF-2蛋白の骨吸収活性、及び60kD蛋白のアミノ酸配列の決定等については現在検討中である。一方、OB-カドヘリンについてはこれまでに骨肉腫細胞から細胞質領域を欠損した変異型OB-カドヘリン分子をクローニングしている。OB-カドヘリンは細胞間接着分子であり、細胞質領域は細胞間接着に必須であるので、変異型は接着性を示さないかあるいは接着を阻害することが予想される。骨肉腫は極めて転移能の高い癌であることが知られており、癌の転移と接着分子は密接に関連するので骨肉腫に於けるOB-カドヘリンの発現及び変異型の発現を調べた。その結果、骨肉腫患者の24検体全てに於いて変異型OB-カドヘリンを発現することが判明した。さらに、その中の極めて悪性の3検体については変異体のみを強く発現することがわかり、変異型OB-カドヘリン分子の発現と癌の転移に強い関連性が示された。L細胞を用いた発現実験では正常OB-カドヘリンが接着性を示すのに対し、変異型は接着性を示さなかった。ゲノム遺伝子の解析から変異型はイントロン内に存在する新たなエクソンが転写されたAlternative splicingによるものであり、ゲノム遺伝子の変異ではないことがわかった。変異型のコードする領域がチロシンキナーゼと相同性を有すること及び胎生期に於いては正常細胞に於いても変異型の発現が見られることなどから、変異型の新たな機能について現在検討中である。
すべて その他
すべて 文献書誌 (3件)