研究概要 |
系統別に特徴ある老化病態を示し、短命な老化促進モデルマウス(SAM)では、老化病態発症に先駆けて免疫能が低下し、また、老化病態としての老化アミロイド症にはApoa2c遺伝子が密接に関わっていることが分かっている。本研究課題では、(1)免疫能の加齢に伴う低下、(2)老化病態、(3)寿命の3つの事象間の関連性を知る目的で、と正常対照マウス(B10.BR)との間で交雑マウスを作成し、種々機能および遺伝子マーカーを用いて検討した。その結果、 1,免疫応答能、遺伝子型と寿命の関係について;遅延型過敏反応(delayed-typehypersensitivity,DTH)および抗体産生反応能は相互に正の相関を示した。また、これと寿命との関係については、(1)低応答で短命、(2)高応答で長命、および(3)高応答で比較的長命の3群に分かれた。(1)は殆どがApoa2cホモで老化アミロイド症を呈し、(2)は全てApoa2a/cかa/aで老化アミロイド陰性であり、(3)はApoa2c/cとa/cを含み、前者は老化アミロイド症を、また後者は炎症性アミロイド症を呈した。 2,Apoa2c/cの個体に於いては、(1)免疫応答能と寿命の長さは正の相関を示し、(2)自己抗体(抗DNA抗体)力価と寿命およびDTH反応は負の相関を示した。一方、自己抗体力価と抗体産生能との関連性は認められなかった。免疫組織学的検索から、SAMP1マウスが短命であることの一理由として、低免疫応答性によって助長される老化アミロイドの組織沈着が強く関わっていると結論された。一方、老化アミロイド嫌発系(Apoa2a/a,Apoa2a/c)であっては、寿命の短縮には炎症性アミロイド症が関わっているものと推察された。
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