研究概要 |
(1)飼育環境がSAMマウスの免疫及び老化病態発症に及ぼす影響;通常環境下で低応答のSAMはSPF環境下での応答能は正常値を示したことから、これは遺伝的に固定されたものではないといえる。SPF下飼育のSAMを通常環境に移した後1〜2ヵ月間は正常応答値を示したので、単なる細菌感染などの免疫系攪乱などによる形質変化ではなく、長期に互っての生理状態変化を意味する。老化アミロイドーシスはSPF環境下で著しく軽減された。2.免疫能低下に関わる遺伝子(群)の特定;推測していた第7染色体上Gpi-1より動原体方向をAkv-1内因性ウイルスプローブで解析した。想定遺伝子はAkv-1か或いはこれと接近していると判定された。マイクロサテライト法によるさらなる検索は特定のマーカーが無く、断念した。3.免疫応答能、遺伝子型と寿命の関係;遅延型過敏反応(DTH)および抗体産生反応能は相互に正の相関を示した。また、これと寿命との関係については、(1)低応答で短命、(2)高応答で長命、および(3)高応答で比較的長命の3群に分かれた。(1)は殆どがApoa2cホモで老化アミロイド症を呈し、(2)は全てApoa2a/cかa/aで老化アミロイド陰性であり、(3)はApoa2c/cとa/cを含み、前者は老化アミロイド症を、また後者は炎症性アミロイド症を呈した。4.Apoa2c/cの個体に於ける関連性;免疫応答能と寿命の長さは正の相関を示したものの、自己抗体(抗DNA抗体)力価と寿命およびDTH反応は負の相関を示した。一方、自己抗体力価と抗体産出能との関連性は認められなかった。免疫組織学的検索から、SAMP1マウスが短命であることの理由として、低免疫応答性によって助長される老化アミロイドの組織沈着が強く関わっていると結論された。一方、老化アミロイド嫌発系(Apoa2a/a,Apoa2a/c)では、寿命の短縮には炎症性アミロイド症が関わっているものと推察された。
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