研究概要 |
テロメアはTTAGGGが1,000回から4,000回繰り返す反復配列より成る。DNA合成酵素は、鋳型DNAの3′末端付近の合成ができず、複製に際してその分だけ短くなる。これに対処するのがテロメアの反復配列であると想定されている。すなわち、これが複製の度に末端から少しづつ脱落し内部の構造遺伝子が保護されている。それを使い尽くした時点で細胞は老化するのではなかろうか。これを"細胞老化のテロメア仮説"とする。細胞老化のテロメア仮説を検証する目的で次の実験を行った。(1)細胞老化および不死化に伴うテロメア長の変化の観察:細胞集団の平均のテロメア長を測定する方法を確立した。これを用いて、多くの細胞老化および不死化に際してのテロメア長の変化を調べた。ヒト線維芽細胞と血管内皮細胞では、一回のDNA複製にあたり100から150のテロメアの塩基対の脱落が観察された。しかし細胞が最終寿命に達した時点に於いても、5から8Kbのテロメア配列が残っていた。(2)テロメア合成酵素(telomerase)のアッセイ系の確率:この酵素のアッセイは原理的には困難ではないが、活性そのものが低く、感度を上げるための検討が必要である。PCRを導入する方法を検討し定量法を確立した。(3)高酸素分圧(線維芽細胞)やTNF-α(内皮細胞)の作用により細胞寿命の変化が観察された。これは上記のテロメア仮説のみでは説明できず、新たな視点の検討を行った。(4)細胞老化と細胞死(アポプトーシス)の相互関連を検討した。
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