インテグリンの接着性とリガンドに対する親和性及びインテグリンの細胞上での局在との関係 肥満細胞は種々のサイトカインを産生し、免疫、アレルギー反応を調節している。肥満細胞はPMAやsteel factor(SLF)や、高親和性IgE受容体(FcεRI)刺激によってインテグリンVLA-5を介して速やかにフィブロネクチン(FN)に接着する。これらの刺激によるVLA-5のFNに対する親和性やVLA-5分子の細胞表面上での分布の変化を調べた。 VLA-5の結合部位をもつFNの80kD断片を作製し、肥満細胞上のVLA-5の親和性を測定したところ、未刺激、SLF、PMA刺激では80kD断片の有意な結合は見られなかった。しかしFcεRI刺激では80kD断片の結合が増加し、親和性はおよそ30nMであった。 肥満細胞上でのVLA-5の分布は免疫走査型電子顕微鏡法で調べた。未刺激の肥満細胞はmicrovilliに覆われ、VLA-5は細胞体表面に斑上に存在している。PMAやSLFの刺激によって、microvilliが消失しひだ状に変化するとともにVLA-5は細胞体表面およびひだ上にも認められた。 これらのことよりPMA、SLF、FceRI刺激はともに肥満細胞のFNへの接着を誘導するが、これらの刺激によるVLA-5のFNに対する親和性の変化とVLA-5の分布には明瞭な違いがみられ、PMAとSLFはおもにVLA-5の局在変化をおこし、FcεRIはVLA-5の親和性を変化させていることが明らかになった。今後これらの変化を引き起こす細胞内分子群を明らかにしていく。
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