我々は炎症、アレルギーにおいて重要な役割を担っている肥満細胞に注目し、インテグリンによる接着がどのように調節されているか検討してきた。肥満細胞はVLA-5を発現しているがフィブロネクチン(FN)には接着できず、steel factor(SCF)の刺激や抗原による高親和性IgE受容体FcεRI架橋による刺激があって初めて速やかに接着できる。 前年度の研究により、肥満細胞上のVLA-5のFNに対する接着性は親和性と細胞表面局在によって調節されていること、特にFcεRIはFNに対する親和性の増大させるのに対して、PMA、SCFはVLA-5の細胞表面局在変化を主に介してFNに接着するようになることが明らかになった。固相化されたFNへの接着における可溶化FNの影響を調べたところ、FcεRIによる接着誘導は可溶化FNによって濃度依存的に阻害されるのに対してPMA、SLFによる接着はほとんど影響なかった。この結果は親和性増大による接着が可溶化FNによって競合阻害されたと考えられる。この親和性の増大はPI3キナーゼの特異的阻害剤により阻害され、活性化型PI3キナーゼの発現によりVLA-5の親和性が増加し、接着が誘導できたことにより、PI3キナーゼによりVLA-5の親和性が調節されていることが明らかになった。このPI3キナーゼによるVLA-5の親和性調節はそのシグナル伝達経路の下流にあると考えられているAkt、Rac、S6キナーゼではないことを遺伝子導入実験や阻害剤の実験により明らかにした。一方、PMAによってVLA-5の局在変化が誘導されることから、PKCによるVLA-5局在調節が考えられる。cPKCアイソタイプに属するPKCα、PKCβI、PKCβIIがSLFによって活性化され、cPKCの特異的活性化剤によりVLA-5による接着が誘導されることがわかった。これらのPKCアイソタイプがVLA-5の局在を調節していることが示唆された。
|