研究概要 |
昨年度までに、IgH遺伝子組み換えを起こしているproB細胞の生存にIL-7が必要なのではないかという事を示唆する結果を得ているが、本年度は、組み換え済みV_H遺伝子を挿入したIgH遺伝子座(IgH^<Tl5i>)をヘテロに持ちかつk鎖をトランスジーンとして持つ、IL-7受容体を欠損するマウス(IgH^<T15i/+>κtg^+IL-7R^<-/->)を作成し、IL-7の機能が表面IgMからのシグナルによって補償されるのか否かを検討した。しかしながら、IgH^<T15i/+>IL-7R^<-/->マウスで見られたV_HT15陽性細胞が末梢B細胞のほとんどを占めるという現象は、野生型(IgH^<T15i/+>IL-7R^<+/+>)マウスで見られるようなV_HT15陰性B細胞の優性に復帰しなかった。また、IL-7Rの欠損によってもたらされる末梢のB細胞数の減少も、IgH^<T15i/+>κtg^+IL-7R^<-/->マウスで野生型の数に復帰することはなかった。従って、IL-7のシグナルは、表面IgMを介するシグナルとは独立に働くものであることが分かった。さらに、T15i/+マウスではD_H→V_HT15組み換えが起き、挿入したV_HT15を破壊し、野生型IgH遺伝子座を発現するB細胞が出現するが、この二次組み換えが、挿入したV_HT15遺伝子の5,側にneomycin耐性(neo^r)遺伝子が残存していることに起因するのか否かを、FLIP-FRTシステムを用いてneomycin耐性遺伝子(FRTシグナル配列で挟まれている)を欠落させることによって検討した。そのため、FLIP組み換え酵素をトランスジーンとして持つマウスと、T15iマウスを掛け合わせ、neo^r遺伝子の欠落したT15i/+マウスを得ることが出来た。ところが、このマウスでもneo^r遺伝子を欠落させていないT15i/+マウスと同様な比率で野生型lgHを発現するB細胞が出現した。従って、この2次組み換えは、V_HT15遺伝子自身の構造(配列もしくは転写活性)によるものであると考えられる。
|