我々は、細胞質型チロシンホスファターゼPTP36の構造をはじめて明らかにし、さらに、PTP36が細胞骨格に結合すること、興味深いこと、自身がリン酸化されることを見い出した。PTP36のリン酸化レベルは細胞接着やv-Srcの過剰発現で影響をうける。PTP36はSrcと会合していたが、PTP36のリン酸化はセリン残基に認められるのでチロシンキナーゼによる直接のリン酸化ではない。即ち、チロシンキナーゼ→セリン/スレオニンキナーゼ・ホスファターゼ→チロシンホスファターゼ(PTP36)という未知のリン酸化制御機構が存在すると考えられる。本研究では、これらの知見に立ってPTP36のリン酸化制御機構を検討した。 (1)PTP36のリン酸化の検討。培養器に付着した3T3線維芽細胞を^<32>Pでin vivo標識し、リン酸化アミノ酸マッピングを行ったところ、PTP36は、セリンのみリン酸化されていた。さらにPTP36とセリン/スレオニンキナーゼが複合体を形成すること、このキナーゼでPTP36がリン酸化されることを明らかにした。リン酸化はstaurosporineで抑制されたがGenistein(チロシンキナーゼ阻害剤)、Calphostin C、H-89、KN-62(各々、PKC、PKA、Ca2+/カルモジューリン依存性キナーゼIIの阻害剤)、ML-9(myosin light chain kinase(MLCK)阻害剤)、W-7(カルモジュリン阻害剤)は抑制効果がなかった。PTP36のリン酸化の意義として、これがPTP36の細胞内での局在を調節することを明らかにした。 (2)PTP36の機能の解析。テトラサイクリンで調節可能なプロモーターを利用して、PTP36の発現が調節可能な遺伝子細胞を樹立した。この細胞でPTP36の過剰発現を誘導すると、形態変化と増殖性の低下が認められた。
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