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活性化に伴ってT細胞表面に発現される分化抗原、TSA-1(Thymic shared antigen-1)は、TCRを介したシグナル伝達経路を制御する分子として機能する。このTSA-1抗原によるTCRシグナル伝達制御作用に関して、研究代表者は最近、TCR複合体中のCD3ζ鎖とTSA-1抗原が物理的に会合しているという、興味深い現象を見い出した。この結果は、TSA-1抗原によるT細胞応答の調節作用はCD3ζ鎖との会合をその分子的基盤としていることを示唆する。
本研究にて、CD3ζ鎖とTSA-1抗原が物理的会合が、TSA-1抗原をはじめとするLy-6関連抗原に特異的なのかあるいは他のGPIアンカー型抗原に一般に認められるのかを解析した。その結果、TSA-1抗原以外のGPIアンカー型抗原とCD3ζ鎖とは会合が認められなかった。また、COS-7細胞を用いたtransfectionの実験にて、TSA-1抗原cDNAとCDζ鎖cDNAを同時にtransfectすると、両者の物理的会合が見られたことにより、TSA-1抗原とCD3ζ鎖は直接会合していることが示唆された。このことは、CD3ζ鎖を発現しないT細胞ハイブリドーマにおいては、TSA-1抗原によるTCRシグナル伝達制御作用が見られないという機能的解析結果とよく相関する。
以上の結果より、TSA-1抗原によるシグナル伝達機能或いはTCRシグナル伝達調節機能は、TCR複合体中のCD3ζ鎖とTSA-1抗原が直接会合することに依っていると考えられた。
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