[目的]B細胞抗原レセプター(BCR)を介するB細胞シグナル伝達おけるCD45の役割を明らかにする目的で、未熟、成熟B細胞株から、CD45陰性クローンを樹立し解析を行った。その結果、CD45は分化段階特異的な制御を行っていること、すなわち、CD45は未熟B細胞株WEHI-231においては、growth arrest、アポトーシスをネガティブに制御しており、BAL-17においては、growth arrestをポジティブにしかも決定的に制御していることを明らかにした。本研究では、その機構の解明を目的として、BCRの下流のシグナルがCD45によりどのように制御されているかについて、MAPキナーゼファミリーに焦点を当て検討した。 [結果]CD45は未熟B細胞株、成熟B細胞株のいずれにおいてもMAPキナーゼ経路の制御に関与しているが、制御の仕方が全く逆であることが示唆された。すなわち、未熟B細胞株であるWEHI-231では、ERK活性化をポジティブに、またJNK、p38の活性化をネガティブに制御していること、それに対しBAL-17では、ERKの活性化についてはネガティブに制御し、JNK、P38のいずれについてもポジティブに制御していることが示唆された。これらの結果は、JNK、p38の活性亢進とgrowth arrestの増強との間に相関があることを示唆している。両者の因果関係について、p38のインヒビターSB203580やJNKの直上に位置するMKK4のドミナント・ネガティブ酵素の発現実験などにより検討中である。
|