まず今年度は、「ライプニッツ哲学における現象と実在-方法論からの検討-」と題して、『西日本哲学年報』に研究成果を発表した。研究代表者の主題であった「構造的類比の意味論」に集約されるライプニッツの言語哲学が科学方法論にどのように展開されているかを考察する中で、ライプニッツ解釈の一争点である力学と形而上学との関係を問題にした結果、ライプニッツ形而上学の力学的解釈の評価に関わり、力学的実在探究の場面での「活力」概念導出の経緯に含まれる「連続律」などの方法的役割、およびそこから形而上学的「内在力」の概念を実体存在論の枠組みで精神と物体との類比的把握を契機として導入する過程の方法論的・言語哲学的根拠を解明することができた。その結論は、ライプニッツの形而上学は実体存在論としてよりも、「真の論理学」の意味の第一哲学としてとらえることが重要ではないか、というものであった。さらにその後、そのようなライプニッツの方法論と言語哲学との関連の特徴を現代の言語哲学のメタファー論や科学理論におけるモデル論などと比較検討することを試みているが、その成果の発表は今後の機会に委ねたい。またライプニッツの言語哲学と方法論との形而上学的関連の特色を影響作用史的にも、より明確にするために、ライプニッツに多少とも関係のあるフッサール、パース、カッシーラーなどに含まれる同じ問題の展開にも視野を広げたが、この点についてもまだまとまった見解をもつには至っていない。ただ上述の力学と形而上学の問題考察の副産物としてフッサールの現象学を理解する上で、ライプニッツのモナドロジーとの比較が非常に啓発的である点を、「相互関係と自己関係-フッサール超越論的間主観性の現象学の帰結」を『神戸大学文学部紀要25号』で示すことができた。
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