日用類書とは、伝統的類書である『芸文類聚』『太平御覧』等とはちがって、『万用正宗不求人』『万宝全書』『全書備考』等の書名からも伺えるように、士大夫庶民の日常生活に有用な知識をすべて網羅し、他人の教えを受けるまでもなく、これらの書を開けば即座に分って実用に供することができるように編纂された一種の百科辞典である。その内容は、法律規則・冠婚葬祭・書画・埋葬・択日・医薬衛生・卜筮・相法・算術等と多方面にわたっているため、士大夫・庶民の日常生活の実情を理解するのに非常に有益な貴重な文献である。しかるに、この文献は正統な読書の対象とはされず、また有用とはいうものの古くなれば棄てられる性質の書物である、という事情から、『四庫全書』に著録されていない。そのために、この文献を収蔵している所蔵機関は少なく、収蔵していても偶然的なものであって、その数は多くない。 昨年来、私たちは全国の収蔵機関の書目を調査したり、直接出向いて調べた上で、すでに15種をマイクロ写真により複写した。今後これについて、書名・編者・巻数・冊数・刊年・各冊の葉数・門類名・各門類の内容の要旨を記載した目録を作成して印刷刊行する予定である。さらに、この日用類書は当時民間に流通していた実用書からの引用から成るものであるので、その典拠となる原書を追求する作業も行う必要を感じている。 以上の収集と調査の過程で、医薬門については、その記載内容から見て、15種の文献がほぼ5種類の系統に分けられ、また、その記述は救急治療法が大部分を占めており、それはまた歌訣という形式をとっていて暗誦に便利になっている、という特徴が明らかになった。そこで、代表者・坂出は今年6月26日〜28日、台湾・中央研究院歴史語言研究所で開かれる「医療与中国社会」研討会に招聘されたので、この機会に、「明代日用類書の医学門について」という中間的な研究報告を予定している。
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