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本研究は近代と反近代とが、また前近代と超近代とが、さまざまに錯綜し互いに転化する様相を示した昭和前期思想史の中心的な問題連関を解明するという課題を掲げ、そのための基本視角及び方法を明らかにしようとするものである。そのさい、とくに研究を導く中心テーマとして<宗教批判>という問題意識を設定し、そこから昭和前期思想史の構造を解き明かそうと試みた。具体的には西田哲学をめぐる哲学アカデミズムの動向や、雪崩的な転向現象や新興宗教(「疑似宗教」)の叢生などの当時の思想・文化事象について、その相互の連関と論理を分析しようとした。研究計画の第1年目はとくに三木清と彼をめぐる宗教論争を中心に、そこでの「あらゆる現実批判の入門」としての<宗教批判>の意義を論証した。第2年目には、三木清を中心にした研究を取りまとめる一方、他方で研究範囲を広げて、昭和前期の思想史の展開を象徴していると思われる思想家として和辻哲郎を取り上げ、その思想性格を確定しようとした。最終の第3年目は、和辻の思想形成の細部を検討し、個別の業績の背景に<国民道徳論体系>と言うべき構想があり、それが昭和5年前後に確立されることを具体的に示した。同時に、この構想が当時の代表的な思想家(河上肇、等)に修正を伴いつつ共有されていることを明らかにした。
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