2年度目の本年度は、飾金具が様式上あるいは技法上どのように変遷するのかを把握すべく、前年度対象にした時期よりもやや新しい17世紀前半〜中葉を前後する建物について調査を行った。具体的には、仙台市・大崎八幡宮本殿(慶長十二年)飾金具、同・仙台東照宮本殿(承応三年)七宝飾金具、西本願寺大広間・白書院・黒書院(寛永〜明暦年間)襖引手、曼殊院小書院(明暦二年)七宝釘隠などについて、全点調査を基本として行い、計測・写真撮影ののち、金具ごとのデータカードを作成。さらにデータベースを構築した。 また近世飾金具の特質を明らかにするため、古代・中世建物の飾金具についても補足的に調査を行った。具体的には、岩手県・中尊寺金色堂、同・無量光院跡出土品、三重県・斎宮跡出土品、京都府・平等院鳳凰堂、福岡県・大宰府条坊出土品などの飾金具を調査した。 前年までの調査成果の分析を進め、原段階での概要を集約する形で、2編の論文を公表した(裏面・研究発表欄参照)。そこでは、第一に桃山時代から江戸時代前期にいたる時期の飾金具の意匠・技法・装飾性などの変遷を段階的にたどり、各段階における金具工房を歴史的に位置付けようと試みた。また桂離宮・修学院離宮所用金具の調査成果を報告し、とくに17世紀後半における金具意匠の多様化という現象が、直接制作にあたった工人側から起きたのではなく、あくまでインテリアコーディネタ-あるいは金具デザイナ-によるものであったことを明らかにした。
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