研究概要 |
昨年度,1つの実験で,人間が無意味なランダムな視覚的パターン情報を,数カ月という長期間保持するというデータが得られたことを受け,その再現性の検討を本年度最初に行った.2つの実験を実施した結果,その両者で,無意味なランダムパターン情報の長期的な保持(2カ月)が確認された.これらの実験結果は,記銘を要求されない状態で,ただ見ただけのパターン情報を,被験者が2カ月後に弁別できることを明確に示している.これまでの研究成果から,人間が詳細なパターン情報を,従来の記憶研究では予想し得なかったほど長期に蓄える能力を有すと明言できる. 上記実験で用いたランダムパターンは白黒のパターンであったが,本年度の後半は,新たに購入したカラーレーザープリンターを用い,形情報に色情報を加え,ランダムなパターンと色の組み合わせといった,さらに詳細な情報を長期に保持するか否かを検討した.材料作成の困難さから実施した実験は1つだけであったが,そこで得られた結果は,パターンと色の組み合わせという非常に詳細な情報を,人が2カ月間保持することを概ね示している.また,パターンは赤色もしくは青色で描かれているが,その色の種類によって長期的な効果の現れ方に違いが出てくる可能性が示唆された.具体的には,赤で描かれたパターンに比べ,青で描かれたパターン情報を被験者は2カ月後に弁別しやすい可能性がある.今回用いた色は,明度がほぼ等しい色を用いた.したがって,この実験で示唆されたことが事実であるならば,色の波長と記憶に関する研究に,全く新しい展開が見込める可能性が高い.
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