本年度の研究計画は、1.昨年度から引き続いて、本研究の基礎となる、鍵盤楽器の社会史についての方法論の研究、及び、2.オルガンを中心とする研究、であった。具体的には、次のようなことを行った。1.4月、5月、6月、8月と、『春秋』に「鍵盤楽器の社会史のためのノート」を4回にわたって、掲載した。本研究の全体的な構想についての論考は、大きな反響を得た。 2.11月22日、日本クラヴィコード協会例会にて、「18世紀ドイツにおける宮廷と都市-クラヴィコードの社会史のために」のテーマで報告した。楽器製作者、演奏家、音楽学者とともに討論、鍵盤楽器の歴史についての学際的研究は、大きな意義があった。3.昭和音楽大学講師関根敏子氏の集中講義「フランス音楽の社会史」に協力するとともに、研究上の意見交換を行った。4.8月より、新潟パイプオルガン研究会を組織、その代表として運営にあたり、3月までに、全10回の研究会を行った。5.『歴史評論』に「ドイツ市民音楽の成立とクラヴィコード」を執筆した(4月に発表予定)。6.4月7日、新潟にて、来日する世界的鍵盤楽器製作者ジャン・トゥルネイ氏、演奏家綿谷優子氏によるレクチャー・コンサートを企画、現存、その準備にあたっている。クラヴィコードは、オルガン、チェンバロ、ピアノの歴史的、社会的性格を問題にしている本研究ととって、きわめて重要な意味をもつが、これまで、わが国では、ほとんど本格的な研究は無かった。本年度の蓄積をもとに、来年度のピアノを中心とする研究につなげていきたい。
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