本研究は3年計画で(1)〜(4)の四項目にわたる作業を行うこととして、申請を行っている。第一年度に当たる本年度は、当初の予定通り、(1)甲骨の出土状況に関する正式報告書の整理検討、(4)外字・甲骨原子のコンピューター処理法の研究、の二項目に絞って作業を行った。 (1)に関しては、既刊著録の甲骨拓本を逐一スキャナーで取り込み、拓本画像データベースの基礎資料を蓄積した。予算の削減により新規スキャナー購入が不可能となったため、既存の旧式な機材を使わざるを得ず、読みとり速度・精度共になかなか満足なものにならず、結果として当初予定の全拓本の取り込みはならなかった。来年度も引き続きこの作業を継続し、拓本画像データベースの完成を目指す。その上で出土情報などの文字データも合わせ、甲骨の出土状況に関するデータベースを完成させたい。 (4)に関しては、作業の前提条件となる、甲骨原字の文字域調査を進める一方、新規購入の外字作成ソフトによる、外字の試作を試みた。結果、隷定された文字については、ほぼ所期の目的を達成できる見通しがついた。一方、甲骨原字をそのまま外字化するためには、適当なソフトが市販されておらず、ドットを一つ一つ打っていく方法によらざるを得なかった。この方法は非常に時間を食うのみならず、できあがった外字も必ずしも満足のいく精度ではなく、何らかの対策を講ぜざるをえないことが明らかとなった。来年度は、甲骨原字の文字域確定作業の継続隷定文字に対する外字作成ソフトによる作成作業の継続と共に、甲骨原字を早く、高精度で作成する方法を模索することとなる。
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