本年度は国立国会図書館に所蔵されている中世末〜近世初期成立と目される仮名遣書の半数を超えるものについて調査を行ない、書誌的な記述をすすめた。また、これと平行して国立国文学研究資料館に所蔵されているマイクロフィルムを利用して、全国諸機関に所蔵されている仮名遣書の調査をもすすめた。本年度は書誌的調査をすすめている仮名遣書の中から『假名遣近道』を採り上げ、諸本を校合したうえで、コンピュータ上にデータ・ベースを作製することを試みた。仮名遣書は同名異本、異名同本が多いために、諸本の内容(=収載されている語)の比較・検索を可能にするデータ・ベースの作製が、本研究のためにはもちろん、他の研究者にとっても有益なことと考えており、使いやすいデータ・ベースを作るための実験という意味合いをもつ。このデータ・ベースが完成すれば、仮名遣書諸本相互の関係もかなり明らかにすることができると考えている。従来の研究はそうした、仮名遣書相互の関係の解明をかならずしも充分に行なっておらず、為に中世〜近世は『假名文字遣』が支配的な勢力をもつ、と漠然と考えられてきたが、さらに具体的な分析を重ねる必要がある。来年度以降も資料調査をできるがぎり広範囲にわたって行ない、諸本の書誌的記述を蓄積し、あわせてデータ・ベースの作製を行ない、それらに基づき、中世末〜近世初期成立仮名遣書の実態を分析していくつもりである。
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