今年度は初年度だったので、まず資料の収集から始めた。すなわち、フランス近・現代詩関係の作品や研究書、および女性史関係の資料を収集した。現在は、それらの読解と分析を、1、書き手が女性の場合、その感性は作品にどう反映されているか、2、女性たちは作品のなかにどのように描きだされているか、などの観点から進めている最中で、まだ研究成果を総括して発表する段階には至っていない。 しかし、女性史関係では、昨年5月に刊行された、J・デュビィ/M・ペロ-の編集による拙訳『「女の歴史」を批判する』(藤原書店)のあとがきにおいて、フランスを中心とした西欧の女性史の歩みをあとづけることができた。また、フォーラム・ジェンダー・ヒストリーの第3回研究会では、フランスの女性史の特性について、言語との関わりから口頭発表をおこなった。 現代詩のなかの女性像については、大学院の授業でイヴ・ボヌフォワの最近の詩集をとりあげながら考察した。作業を通してわかってきたことは、フランス現代詩においては、書き手が女性でない場合、あるいは女性が直接描写の対象になっていない場合でも、いわゆる「女性性」は随所に発見され、「男性性」とさまざまなかたちでダイナミックな関係を展開しているということである。このことは、名詞に性の区別があるフランス語の特性に負うところが極めて大きいと思われるので、さらに多くの作品の読解を通して分析を進めていくつもりである。
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