研究概要 |
F.de FrancisciやC.Accariasなどの先行研究、Vocabularium iurisprudentiae romanaeやThesaurus lingae latinaeその他のインデックス、CD-Rom、またDigestorumsimilitudinesを用いて、contractus innominatus(無名契約)に関わる法文や非法律史料を網羅的に検索し、それを日本語訳とともにパソコンに入力する作業を行なった。すなわち、法律文献ではGaiusのInstitutionesやDigestaだけではなくPaulusのSententiaeやCodex Theodosianusなどからも、また非法律文献ではCicero,TacitusのみでなくL'annee epigraphiqueを手がかりに碑文史料からの検索も行ない始めた。 しかし、検索はおおよそ当初目的通り進んでいるが、入力およびデータベース化に関しては、たとえばGaiusだけでも関連法文が管見の範囲で26法文あり、それを原文および日本語訳文の2本立てでパソコンに入力し、データベース化する作業は予想以上に時間を要するものであった。したがって、平成8年度中に検索した全史料をデータベース化することはできなかったものの、無名契約に含まれる行為類型、たとえば「私はあなたに、2年後に奴隷解放することを目的に10金を与える」というような行為がいつ頃、いかなる背景で法的保護を与えられたのか、またそれ以前は全く法的保護を受けていなかったのか、などについてしだいに明確になりつつあるように思われる。
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