本年度は、本格的な検討のための前提として情報ネットワークを通じた「民意」の集約の技術的可能性及びその問題点についての検討を行った。まず、東京大学先端科学技術研究センターのコンピュータ・ネットワークを利用してインターネットによる世論調査を実験的に行った。その結果、現時点では回答を行った者はコンピュータ愛好者や学生など特定の社会的集団への偏りが見られ、主婦等も含めた一般的な世論の形成という観点からは未だ問題点が多いとの指摘がなされた。ただし、今後のパソコンの大衆化やインターネットの普及状況によっては、このような形態の世論調査も効果的に行われる可能性があるとの結論を得た。 次に、コンピュータ・ネットワークを活用した電子投票システムの技術的な可能性及び今後の課題について、当センターの工業系の研究者と共同で検討を行った。その結果、電子投票システムは迅速な集計を行うことができるなどの優れた機能を有する反面、投票が公正に行われたことを確認することが困難であることや、投票の秘密を保障するための技術的方策など現時点では多くの技術的課題が残されているという結論となった。 他方、最近沖縄県の米軍基地問題や新潟県巻町の原子力発電所建設問題など地方レベルでの政治的問題への対処のための手段の一つとして住民による直接投票が行われるようになってきた。我々は、新潟県巻町の複数の住民からこのような住民による直接投票の意義及び問題点について適宜インタビューを行った。
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