・電子マネーの発達と普及により、新たな商取引、慣行が個人間の決済、政府金融政策、制度に大きく影響してくる。人類がまったく経験していない新しい金融危機が訪れる可能性もあり、このような点についても考察した。電子マネーのシステムクラッシュが起こった場合に、経済的な影響は大恐慌を上回るものと予測される。 ・現在流通している電子マネーは、クレジット決済型とICカード貯蓄型、ネットワーク型に分類される。クレジット決済型は、他の二つが実験段階であるのに対して現状でもかなり実用化されて先行しているといえる。しかしオープンなネットワークでの使用にはセキュリティ上問題がある。 ・また預金返還請求権を電子的に移行して預金を利用する電子マネーといえるものも存在する。これは銀行などの間でのオンラインなどのみで使用されるクローズドな形態をとっている。銀行の営業時間、銀行間の振り込みに関する制度上の制約がある。 ・ICカード貯蓄型の電子マネーは小額の決済に向いている。銀行などの承認を経ることなく決済できるなど、通貨としての機能を持っているが、暗証などが盗用される可能性もあり、高額の決済には不向きである。 ・eキャッシュなどネットワーク型の電子マネーはセキュリティに優れるが、二重使用を防ぐために1回しか使用できない。このような制限は通貨の機能として不完全であることがわかってきた。 ・このような現状からみて、自立した通貨としての完全な機能を持つ電子マネーの登場にはまだ時間がかかるであろうという結論にいたった。重要なことは、電子マネーのように社会的な影響の大きいものは容易に実験して見ることができないことである。
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