平成8年度は、電子貨幣、電子商取引などの基礎的な調査を行い、既存の電子マネーシステムの特徴と問題点を明らかにした。この結果、ネットワーク型の電子マネーは問題点を克服しておらず、ICカード型の電子マネーが先行して流通実験が各所でスタートした。本研究では、平成9年度に電子マネーをターゲットとして、数種類の公開鍵暗号、秘密鍵暗号を開発した。この中の一つは、従来にないまったく新しいアイディアで実現された極めて高速な暗号であった。パーソナルコンピュータで実験しても、100Mbits/secの暗号化速度を達成できた。これは既存の全ての暗号よりも数倍高速な結果である。100BASE-TXのネットワークにソフトウェアのみでリアルタイムに追随できる唯一の暗号である。つまり単なるネットワークを専用回線として活用できる可能性がある。この暗号技術には、国内の企業がスポンサーとしてつき、製品化への道が開かれた。現時点では、特許申請との関係で、ここで技術的な詳細に言及できないが、最終的な報告書には主要な成果として記述する。今後の研究計画では、これを用いて新しい電子貨幣システムの試作品またはモデルを作成する予定である。
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