ソーシャル・インベストメントのための企業評価システムの現状を明らかにするために、この領域の先進国であるアメリカ、イギリスの動向を研究した。その結果、ソーシャル・インベストメントには、証券投資のための企業評価と株主提案のための企業評価システムが必要なことが明らかとなった。証券投資のための企業評価システムは、除外対象を選別するシステムと、定性的に投資対象を分析するシステムに分かれる。株主提案のための企業評価は、何よりも株主の関心事に依存するものである。さらに、日本でのソーシャル・インベストメントのための企業評価の実際を検討するために、ソーシャル・インベストメントの一領域である環境投資の側面から検討した。具体的には、日本企業の環境報告書を取りよせて、環境パフォーマンス分析を試みた。今回の研究では、その具体的な環境パフォーマンス分析システムの構築にまでは進めなかったが、日本企業の環境情開示の充実ぶりは明らかとなり、そのための基礎情報が整備されていることが明らかとなった。この側面の研究はさらに今後も継続する予定である。最後に、ソーシャル・インベストメントのための企業評価システムが一般化するためには、企業倫理の促進が不可欠であることも明らかとされた。
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