研究課題/領域番号 |
08874009
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
磯 祐介 京都大学, 大学院情報学研究科, 教授 (70203065)
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研究分担者 |
久保 雅義 京都大学, 情報学研究科, 講師 (10273616)
塩田 隆比呂 京都大学, 理学研究科, 助教授 (20243008)
西田 孝明 京都大学, 理学研究科, 教授 (70026110)
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キーワード | 逆問題 / 非適切問題 / 偏微分方程式 / 境界積分方程式法 / 数値解析 / 多倍長計算 / 安定性理論 / 境界要素法 |
研究概要 |
Helmholtz方程式で記述される逆散乱問題を中心に解析を行なった。R.Kressの手法に従えば、Helmholtz方程式で記述される音場の未知散乱物体を決定する逆問題は、境界積分方程式によって記述されることが知られている。この積分方程式にたいし、これまではTikhonov正則化法を利用する数値解析が行われてきた。これに対し、本研究ではこの非適切問題のいわゆる適切成分を考慮して、多倍長数値計算を利用して直接計算を行うことを試み、成果を得ている。一般に非適切問題は、いわゆる高周波成分に対知るSobolevノルムでの評価が不可能であることがその非適切性であり、これは数値計算上での丸め誤差に対する不安定性を意味するものである。しかし、見方を変えて与えるデータ構造を制限すれば適切化される非適切問題も多い。本研究ではこの点に目をつけ、一般には非適切な問題の適切成分を調べ、そこへの制限を伴った数値計算によって安定した数値計算を行うことを試みた。しかし、実際の数値計算では丸め誤差が伴うために理論通の計算を行うことは容易ではない。本研究ではこの部分を多倍長計算という手法にたより、理論の計算機での実現について検討を行った。理論的には適切成分と言えども多倍長計算にのみ頼って計算を行うことは不可能であるが、本研究で扱った程度の逆散乱問題ではそれなりに精度が出ることが示された。さらに、この研究を通して、順問題(通常の楕円型境界値問題など)に対する数値解析に境界要素法を利用する利点も分かった。すなわち、これまでの境界要素法研究で主張されている境界要素法の高精度性が、本研究の非適切問題の解析を通して示された。
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