研究概要 |
進化生物学における系統樹の祖先形質最節約復元問題(MPR問題)の数理的研究が進められ,その研究において重要な概念であるACCTRAN復元の性質を浮き彫りにする次の二つの定理が得られた. 第1定理(ACCTRANの完全最節約性):ACCTRAN復元は自分自身を含め,そのすべての部分木が最節約性を持つ. 第2定理(ACCTRANの極値性):ACCTRAN復元はその各ノードにおいて,最節約復元がとり得る形質値の最大値または最小値のいずれかをとる. さらに,大域的最適解(祖先と現存種の形質値が与えられたとき,その間の全長を最小化する樹形および中間種の形質値を同時に与える解)を求める問題(第2種のMPR問題)は,Steiner問題と結びつけられ,NP完全問題の1つと考えられていたが,D.L.Swofford,W.P.MaddisonらのApproachに基づく成嶋-花沢の定式化のもとでは,単一形質または標準化された多重形質の場合に,簡明な方法で本質的に一意な大域的最適解が求まることを示した. 今後,最節約復元のなかでACCTRAN復元と並んで重要なDELTRAN復元の特徴付け,MPR-poset上でのACCTRAN復元とDELTRAN復元の関係,MPR-posetの束論的構造,および第2種のMPR問題の一般的解法,さらには形質状態のより一般的な遷移関係の下での最節約復元問題の研究に取り組み,理論としての進化発展をはかると共に,得られたアルゴリズムのコンピュータインプリメントも行い,最節約復元問題のソフトウェアの開発作成も行う予定である.
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