研究概要 |
研究代表者は平成8年7月京都大学にて研究集会"Discretizations of Integrable Systems : Theory and Applications",同10月大阪大学にて研究集会「応用数学における非線形可積分系の視点」を開催し,この科研費から講演者の旅費の一部を援助した.また,研究代表者は合計15回に及ぶ学会・研究集会講演を行うとともに,新設のため計算機設備の乏しい自らの講座に数値シミュレーション用計算機を購入しアルゴリズムの数値実験を行った.以上の研究活動へのサポートを感謝する.この研究課題に関連して平成8年度には次のふたつの進展があった. 1 分子型タウ関数をもつ可積分系である戸田分子の新しい応用として,与えられた無限回微分可能な関数のLaplace変換の連分数展開の計算法を定式化できた.連分数の係数は関数とその導関数を成分とするHankel行列式,すなわち,タウ関数の対数微分を用いて書き下される,連分数展開が収束する場合には,連分数展開はLaplace変換の無限遠点における漸近展開となっている. 2 可積分系の制御理論への応用として線形システムの同定問題を研究した.これは,ノイズの入ったサンプルデータからシステムの伝達関数を推定する問題で,一種の逆問題である.新しく定式化したアルゴリズムでは2N個のデータからN次有理関数の形でシステムの伝達関数が計算される.実際の電気回路についてデータを採取し,サンプル値の平均化を経てこのアルゴリズムによって離散Laplace変換を計算した結果,いくつかの例でシステムの次数同定に成功した.簡単な回路では回路素子の値の同定も十分な精度でなされた.
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