研究概要 |
低エネルギー(約100keV)の重陽子ビームを種々の物質に照射し、重陽子融合反応、D(d,p)T反応、からの反応陽子数および反応陽子のエネルギースペクトルを測定することによって、物質中での注入重陽子の拡散現象を調べる新しい方法を開発した。今回科研費の補助を受けこの方法の有用性を調べるために、新しく実験装置を設計製作し、それらを組み上げた。装置の特徴を示す。(1)真空槽:現有の筑波大学加速器センターのラムシフト型偏極イオン源からのビームを用いて実験を行うため装置の設置場所に制限があり、長さ50cm、幅25cm、深さ25cmの小型の真空箱を制作した。従来のテスト装置では、標的試料温度は、室温に限られていたが、できるだけOリングを使わずメタルガスケットを使用し、標的温度を液体窒素温度から400℃程度の温度まで保つ事が可能になるようにした。加熱装置の設置は、次年度に計画しており、当面は室温での実験を行う。また小型の真空ポンプを取り付け真空槽内を10^<-7>Torrの高真空に保つことができる。(2)検出器:反応陽子の検出器として、2種類の検出器を用意した。一つは、反応陽子数を効率よく検出するためにアニュラー型のプラスチックシンチレーター、もう一つは、エネルギーを分解能よく測定するためにシリコン半導体検出器を設置した。(3)偏向電磁石を設置することによってイオン源から直接入射してくる中性ビームを完全にカットできるようにした。2月にこれらの装置全体の部品が完成し、これらをビームラインに組み上げ、3月にビームトランスポートのテストを行った。続いて検出器のテストを行い注入重陽子拡散に関する系統的な実験を始める。
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