クォーク物質の物理的性質について、クオーク・グルオンの量子色力学(QCD)に基づいて研究した。我々の研究の主たる目的は、クォーク間の引力による二体相関(ク-パ-対)がクオーク物質に及ぼす影響を明らかにすることである。 まず、グルオン交換相互作用は「カラー反対称、スピン平行状態」にある2個のクオークに強い引力を与えることに注意する。クオーク多体系にBCS近似を適用すると対平均場としてのエネルギーギャップを決める方程式を得、有限のギャップを持つ状態(BCS状態)の方が安定であることが示される。この状態について次のことが明らかになった。 1.温度ゼロにおけるクオーク物質の状態方程式: クオーク密度ρを変化させてギャップ方程式を解き、系の熱力学ポテンシャルから圧力Pを計算し、状態方程式を求めた。超伝導状態の圧力はフェルミガス状態の圧力に比べ減少し、系はよりソフトになることがわかった。また、クオーク密度が小さいとギャップはゼロになるが、密度を大きくするとギャップはクオークのフェルミ運動量に比例して大きくなることを示した。ただし、これをQCD結合定数を定数とした場合である。((1)の結果については現在出版準備中) 2.Bogoliubov変換の一般化: 我々の系のギャップはスピンのみならずカラーの自由度を持つ。この系の準粒子の一つはギャップゼロであるという特異な性質をもち、これがクオークの運動量分布に不連続性を与えることがわかる。この性質は、実は我々のBogoliubov変換がimproper(行列式が負)であるという性質から生じることを示した。
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