研究概要 |
ハーフメタル強磁性の特徴的電子物性を追求するために以下の実験を進めている。 (1)ハーフメタルNiMnSbの島状蒸着膜における電気抵抗の磁場依存性。この実験から、ハーフメタルの電子状態を反映する巨大磁気抵抗が期待される。現在、膜厚1000Åから100Åまでを探索したが、蒸着膜が「島状」に達しておらず、さらに薄い膜を追求しつつある。 (2)代表的ハーフメタルNiMnSb,PtMnSbについて、^<55>Mn,^<121>Sb,^<123>SbのNMRの緩和時間T_1の温度変化。温度領域4.2Kから300Kまでの範囲でT_1の測定を行っている。T_1の大きさは、期待通り、通常の磁性合金に較べて1桁程度大きいことがわかったが、意外にも、その温度変化はほぼT_1T=constantの関係を示す。この意味は、ハーフメタルで期待されるものではなく、通常の強磁性金属のように解釈される。T_1の物理的起源を掘り下げる必要に迫られている。 (3)ハーフメタル関連物質としての半導体ホイスラ-合金の巨大磁気抵抗効果と金属絶縁体転移。L2_1型Fe_<2+x>V_<1-x>Ga系で、x≒0付近で、50%に達する巨大磁気抵抗を発見した。物理的解釈として、Fe_2VGaは半導体であり、少量の過剰Fe原子クラスターが磁気モーメントを持ち、磁場による整列で金属的となり、巨大磁気抵抗が起こるとした。前提としてのFe_2VGaの半導体は、最近のバンド計算から証明され、NMR実験もこれを支持している。 この研究を確実なものにするため、さらにFe_<2+y>V_<1-y>Al系に実験を拡げ、巨大磁気抵抗の起源と新しいタイプの金属絶縁体転移の機構を検索しつつある。 結果の一部を国際磁気学会で発表し、論文として公表した。
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