研究概要 |
ハーフメタル強磁性の特徴的電子物性を追求するため、以下の実験を進めている。 (1) ハーフメタルNiMnSbの島状蒸着膜におけるトンネル抵抗の磁気抵抗効果。この実験から、ハーフメタルの電子状態を反映する巨大磁気抵抗が期待される。今まで、膜厚1000Aから50Aまでは「島状」ではなく、金属的抵抗率が観測されている。しかし、40A以下で急激な抵抗率の増大がみられ、磁気抵抗の測定に掛かっている。 (2) NiMnSb,PtMrSbについて、Mn,Sb核のNMRの緩和時間の測定。緩和率の大きさは期待どうり、4.2Kから300Kの範囲で小さな値が観測されているが、意外なことに、この温度範囲でコリンハの関係式が成り立っている。この意味はハーフメタルで期待されるものではなく、通常の強磁性金属のように解釈される。現在、ハーフメタルの条件での緩和機構として、超微細相互作用の再検討をしている。 (3) ハーフメタル関連物質としての半導体ホイスラー合金の巨大磁気抵抗と金属絶縁体転移。ホイスラー型Fe_2VGa,.Fe_2VAlにおいて、それぞれ、50%、40%に達する巨大磁気抵抗を観測した。電気抵抗の温度変化は半導体的で、エネルギーギャップは、それぞれ、0.1、0.2eVであった。V原子に換えてFe原子を増やすとすぐに強磁性金属状態となり、抵抗の温度変化に特徴的な極大がTc付近に現れる。化学量論の組成でも、わずがな過剰Fe原子が磁気モーメントをもち、外部磁場による整列で金属状態が実現するために大きな磁気抵抗効果が現れると考えられる。つまり、金属絶縁体転移が起きていることになる。この解釈はNMRの実験からもたしかめられ、また、ごく最近のバンド計算の結果と一致している。研究成果を国内外の学会に発表し、一部を論文とした。さらに、詳細な研究を続けている。
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