研究概要 |
臨界現象 研究の新しい空間変調モンテカルロ法を考案し,その特性を検討した.臨界現象では秩序変数の長距離揺らぎが重要であるが,フラストレート系では非自明の量が秩序変数になる.モンテカルロ・シミュレーションで短距離秩序構造を発見可能だが、通常の周期境界条件を課した有限系のシミュレーションでは,許される波数が特定のものに制限され,シミュレーションを行う系を単位胞とする「結晶」の波数空間におけるreduced BZでの,k=0モードの揺らぎしか扱えない.各単位胞ごとの位相を変調する変数を導入することによって,k≠0の長波長揺らぎが扱える.ただし,長波長揺らぎ間の相互作用は無視されるので,有限サイズスケーリングの併用は必要である.この「位相」概念は,XYスピン系では自然に導入できるが,Ising系などの離散的な対称性をもつ場合でも,類似の変調概念を導入できる. このような位相変調変数を用いたシミュレーションは,拡張アンサンブルとして取り扱うことができ,位相変調変数のヒストグラムを取ることによって,その分布関数に,長距離揺らぎに関する情報が含まれているため,臨界現象の情報を引き出せる. 上記の検討結果に基づき,2次元XYスピン系の位相変調アルゴリズムを用いたプログラムの開発した.これまでの予備的な計算では,非整合構造をもつ2次元反強磁性三角格子モデルで,整合構造(AFT120°構造)に対する結果(Miyashita and Shiba,1994,J.Phys.Soc.Jpn.53,1145)とコンシステント(T_<KT><T_C)であったが,依然として,相転移の性格に関して明確な結論を下せていない.この点に関しては,アルゴリズムを改良した計算を行い,相転移の性格についてなお詳細な分析を行っている.
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