研究概要 |
35次南極観測隊で採集されたやまと山脈の氷試料、及びみずほ基地で採集されたボーリング試料の飽和残留磁気と初期帯磁率を測定した。これらの試料から直径3cmの立方体試料を切り出し、0.8Tの外部磁場で、飽和磁化を付け、その大きさを超伝導岩石磁力計で測定した。その結果、10-5Am2/kgの磁化が測定された。この試料の表面を蒸留水で洗浄し、再度測定したところ、磁化は10-9Am2/kgと減少し、ノイズレベルの磁化となった。この事から切断により試料に磁気的な汚染が容易に付くことが判明した。切断後洗浄した3mの長さのボーリングコアの飽和残留磁気を連続的に測定した結果、ほとんどの試料の飽和残留磁化はノイズレベル以下であったが、一部の試料から有意義な磁化が測定された。この磁化が宇宙塵に由来するものか火山灰に由来するものか今後検討したい。これらの試料の初期帯磁率を測定した結果、おおよそ-8x10-6(SI)の値が得られた。この値は試料の方向によりわずか異なるため,結晶磁気異方性が測定されている可能性が考えられる。氷の結晶軸が磁気的に非破壊で測定できれば、氷床ダイナミックスの研究にとって重要な情報を与えることができる。現在、氷の結晶磁気異方性を精度良く測定するため、磁力計周辺の磁場環境の調整と装置の改良等を行なっている。 南極から採集された雪と日本の雪が磁気的にどのように異なるかを調べるため、東京及び上越地方で雪を採集した。これは、日本の雪が南極に比べどのくらい汚染されているかを調べる基礎的なデータとなる。
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