1.木星型惑星大気中の対流を計算するための数値モデルの作成 地球大気の雲対流用の数値モデルをベースとして、研究に用いるモデルの力学部分を作成した。具体的には、水素・ヘリウムを主成分とする大気の中に、水の相変化・雲物理を導入したブジネスク流体モデルを作成した。また雲物理過程には大きな不確定が残っている。また、放射過程の扱いは、下からの熱源の扱いとともに、今後の課題である。 2.木星を想定した広いパラメタでの予備的実験 断片的ながらもガリレオ探査器の観測がある木星について、共同利用大型計算機を用いて予備的な計算を行なった。鉛直の下限がガリレオの突入高度よりも十分深い95気圧、上限が0.001気圧、また水平には512kmの二次元モデルを試用し、約300時間の計算を行なった。得られた結果は、木星大気の対流が、水の凝結する高度を境にして二階建て構造となることを示した。すなわち、凝結高度より上では地球の積乱雲と良く似た局所的上昇流と幅広い下降流の組み合わせとなるのに対して、下では通常のベナ-ル対流と似た構造となった。また、下の部分の水蒸気混合比がほぼ一様であるのに対して、上の部分の湿度には強い不均一があり、局所的には極めて乾燥した状態になり得る。これらの結果とガリレオの観測との整合性などについては現在検討中である。 3.他の木星型惑星を想定した予備的実験 他の木星型惑星、あるいは今後発見される可能性がある太陽系外の惑星一般を考える場合を想定したサーベイを行なった。具体的には、大気主成分と相変化する成分との熱力学的諸量の関係によっては、雲が下降流で生じる、あるいは、潜熱が対流を妨げる方向に寄与するなど、色々な場合があり得る。これらについて、本研究費により購入した計算機を用いて一連の多数の小規模な実験を行なった。
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