1.木星型惑星大気中の対流の数値モデルの作成(前年度の継続) 地球大気の雲対流用の数値モデルをベ一スとして、研究に用いるモデルの力学部分を作成した。具体的には、水素・ヘリウムを主成分とする大気の中に、水の相変化・雲物理を導入したブジネスク流体モデルを作成した。まだ雲物理過程には大きな不確定が残っている。また、水蒸気などの移流の計算には数値的誤差への対策としての改良を行った。放射過程の扱いは、下からの熱源の扱いとともに、引続き今後の課題である。 2.木星大気の鉛直構造に関する結果 引続き、ガリレオ探査器の観測がある木星について、共同利用大型計算機を用いた一連の計算を行っている。その結果、木星大気の湿潤対流層の相対湿度は、従来、雲の単純な概念モデルに基づいて推定されていた値よりもずっと大きいことが示唆された。これは、本研究におけるアプローチ、すなわち完全な流体力学モデルを長時間積分して統計的平衡状態を得ること、の重要な成果である。また、凝結高度で絶対湿度が急減することと、それより上で一般にポテンシャル温度が高くなることにより、この近傍は強い安定層になる。これをはさんだエネルギー輸送は、対流運動による熱輸送ではなく、水蒸気が上昇し、雨が落下するという水輸送として生じていることもわかった。 3.ガリレオの観測の再現実験の試み 本研究の結果は、ガリレオプローブが観測した乾燥した状態が大規模な大気擾乱に伴う局所的構造であることを示唆している。そこで、惑星の自転効果を導入し計算領域を拡大したモデルを用いて、そのような大気擾乱の特徴を再現することを試みている。この試みは来年度も継続する予定である。
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