大気中のメタンガス及び炭酸ガスは温室効果ガスとしてその増減が地球温暖化に大きな影響を与えるが、その高度分布、水平分布や、地表面以外の各高度での時間変化等は測定されていない。本研究では距離分解能を持った遠隔計測法である差分吸収ライダー(DIAL)法を用いることにより、これらのガス濃度の高精度空間分布計測を実現する。メタンガス及び炭酸ガスは近赤外の波長帯に吸収線を持つが、近赤外域の波長可変レーザーとして、効率の良いTi:サファイアレーザーとラマンシンフタ-を利用することにより安定な光源を開発した。Ti:サファイアレーザーは従来よく用いられているNd:YAGレーザの第2高調波励起ではなく、フラッシュランプ励起のものを用いた。DIALではレーザー光スペクトルを狭帯域化し、波長同調を行う必要があるが、我々はそのために外部共振器型半導体レーザーを試作し、それによるインジェクションシーディングを行うことによりこれを実現した。さらに、Ti:サファイアレーザーをメタンガスを充填したラマンシフタ-に注入し2次のストークス光を得ることにより、基本波820.3nmから1572nmの炭酸ガスの吸収線に合ったレーザー光をを得た。更に基本波836.4nmから1632nmのメタンガスの吸収線に合ったレーザー光を得た。受光用の光検出器には近赤外域(1.4μから1.7μm)まで感度を持つ光電子増培管を用い、液体窒素による冷却を行いダ-クカウントを減らし、フォトンカウンティングによる光検出を可能にした。
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