福島県・田島の林冠環境の異なる3地点(コナラ林、アカマツ林、林外)において、積雪中の化学物質濃度および生物量の変化を調べた。積雪中の陰イオン濃度は、アカマツ林内でコナラ林内および林外よりも高くなっている。各地点とも積雪中のCl^-、NO_3^-、SO_4^<2->濃度は、融雪の進行によって低下する。しかしながら、積雪中のPO_4^<3->濃度は、いずれの地点でも融雪最盛期に増加する。その濃度が、アカマツ林内とコナラ林内で林外よりも高いことから、積雪中のPO_4^<3->は有機物の二次生成物と考えられる。顕微鏡観察によると、林内の積雪中には細菌・カビ・藻類の存在が認められるが、積雪初期には低密度で、融雪最盛期に増加する。積雪中のクロロフィルaとフェオフィチンaの濃度は、アカマツ林内においてコナラ林、林外よりも高い。また、アカマツ林内およびコナラ林内のクロロフィルa濃度は、融雪最盛期に増加し、藻類が増加することを示している。積雪中のバクテリア数は、アカマツ林内>コナラ林内>林外の順であり、融雪最盛期に多くなる。積雪融解試料による培養実験の結果、アカマツ林内の試料を明所に置いた場合のみ、NO_3^-濃度が減少し、25日目以降NO_3^-が検出されない。積雪融解試料に緑藻を添加した培養実験では、アカマツ林内の試料で、2週間でクロロフィルaとして14.7μg/lの緑藻が増加した。この結果から窒素の消費量を見積もると、藻類の増加によって積雪中からNとして220μg/lが消費されたことになる。
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