本年度は研究対象地域である 1)岡山県川上町・美星町・井原市(夾炭三畳系成羽層群・舞鶴帯変成岩) 2)韓国沃川帯(古生界平安累層群・中生界) 3)沖縄八重山群島(中新統八重山層群・石垣変成岩) 以上3地域の野外地質調査(約40日間)と試料(炭質物・岩石)採集、および試料の室内実験(光学指標(反射率・反射異方性)の測定とX線解析による結晶化度解析)を行った。実験機材として、新たに米国BEUHLER社の試料埋込機SIMPLIMETII型を購入し、実験前処理の効率化を図った。 これまでに得られた本年度の成果を要約すると次の通りである。 1.韓国中古生代炭(試料185個)の有機変成度は、無煙炭〜変無煙炭段階(Ro=3.74-9.20%)であり、メソマグマティズム(大宝及び仏国寺花崗岩の迸入)の影響により、有機変成は著しく進んでいる。 2.成羽炭(同120個)は、瀝青炭〜変無煙炭段階(Ro=1.86-7.06%)にあり、伏在すると予想される火成岩体からの付加的被熱を受けている。 3.炭質物の光学的指標と結晶化度の相関を調べた結果、結晶化度は有機変成作用の進行に伴い上昇するが、ビトリナイト反射率以上に反射異方性との相関がよい。 4.沃川帯で、等しい有機変成度の試料で比較すると、変成区の試料の方が非変成区のそれより結晶化は進んでいる。結晶化に及ぼす圧力の影響が、沃川帯の変成区と非変成区の結晶化の程度の違いに反映されていると解釈される。 次年度は、引き続き野外調査と室内実験を並行しながら、広域変成帯からその周辺の非変成帯にかけての有機変成相の特徴と変成分帯との関係を、各地質体毎に考察していく予定である。
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