研究概要 |
原始太陽系の星雲ガスとダストとの相互作用を調べるために、衝撃波管を用いた流体力学実験を行った。ダストは星雲ガス中で衝突合体を繰り返して空隙率の高い微粒子の集合体に成長していくが、その運動は星雲ガスの抵抗により制御されている。そこで、ダストのモデルとして脱脂綿を用いた実験を行い、様々なバルク密度やサイズを持つ脱脂綿の変形モードの観測と抵抗係数の測定を行った。 超音速気流の発生には全長1.3mの矩形管からなる標準型衝撃波管を用いた。この装置により、低圧部の空気にマッハ7までの衝撃波を発生することができる。試料には、星雲ダストの高い空隙率や個々の粒子同士の絡み合いを考慮して脱脂綿を用いた。この脱脂綿を3種類の直径(8,16,30mm)を持つ球に整形して、それぞれの質量を5〜200mgの間で変化させた。この球形試料を衝撃波管に吊し、高速気流中での運動をイメージコンバータ-カメラで観察した。撮影速度は5万駒毎秒である。撮影した画像から試料の重心運動や全体の変形の様子を解析して、その時受けたガス抵抗力や変形のモードを求めた。 試料は高速気流を受けるといったんは流れ方向に縮み、その後同じ方向に引き延ばされる。この圧縮変形が引っ張り変形に転ずるまでの時間は、試料サイズが小さいと短く(Φ=8mm,80μs),サイズが大きいと長くなる(Φ=30mm,200μs)。一方、抵抗係数は、試料サイズが16,30mmの時、密度の増加とともに0.2から0.7と大きくなる。また、サイズが8mmと小さい時は0.1から0.2と密度が大きくなっても変化しない。このようなサイズによる抵抗係数の違いは、先に述べた試料変形の仕方に関係していると思われる。
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