研究概要 |
本年度は,次の2点において研究の進展を見た。第一は,中性温泉水中のランタノイド元素の溶存量に関してであり,第二は,炭酸水溶液中のランタノイド元素の溶解度を測定するための装置の試作に関してである。 中性温泉水中では一般にランタノイド元素はpptオーダーで存在する。しかし,炭酸イオン濃度の高い一部の温泉水においては,少なくとも一桁高い濃度で存在することが確認された。その正確な原因は明らかではないが,ランタノイド元素が炭酸イオンとコンプレックスをつくるため溶存量が増加している可能性が高いことが示唆された。 炭酸水溶液中のランタノイド元素の溶解度を測定するための装置の試作に関しては,まず,簡易型の高圧容器とソーダサイフォンを用いて予備実験を行った。その結果,1気圧前後の圧力下,ランタノイド(III)は,ppmのオーダーで炭酸水溶液に溶解することがわかった。これより,ランタノイドの定量が,放射化分析ではなくICP法で可能であることがわかった。また,溶液中の全炭酸濃度が微量拡散法で測定できることが確認できた。 予備実験の結果および予備実験での実験操作上の問題点を参考にして,高炭酸溶存水中でのランタノイド元素の溶存量を正確に測定するための装置を設計し,試作した。この装置では,温度および二酸化炭酸分圧,従って溶存炭酸量の制御が可能である。また,1気圧,常温付近の実験では,pHの測定も可能である。予備実験で困難であった溶液を直接サンプリングすることも新しい装置では比較的容易にできるよう工夫した。新装置を用いてのデーターの収集には至っていないが,来年度以降データーの集積が期待でき,炭酸水中のランタノイド元素の溶存状態に関し,新たな知見が得られるものと確信している。
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