昨年度に引き続きゼオライトを分散した液晶に溶質分子を加え、主にNMR(核磁気共鳴)の測定を行った。まず、一定の実験条件が得られるように実験方法を改良した。次に、メタノール、エタノール、フラン、ピリジンについて測定を行った。通常、液晶にはE8を用いたが、エタノールの場合にはスペクトルの解析が困難であったため、直接結合定数の文献値の文献値のある液晶EBBAを用いた。 ゼオライトを加えるとメタノールのときにスペクトルに最も大きな変化が見られた。ゼオライト4Aを混ぜた系ではメチル基に帰属されるスペクトル線は殆ど変化しないが、水酸基に帰属されるスペクトル線幅は著しく太くなった。そして水酸基プロトンの化学シフトとそれが関与する直接結合定数も著しく変化した。エタノールのスペクトル解析は終了したが、構造解析はまだである。これができれば、ゼオライト添加による構造変化の有無が明らかになる。 フランではスペクトルパターンが明らかに変化したが、これは構造の変化によるものでなく配向度が変化したためであることが分かった。ゼオライトの種類を変え、溶質の濃度を変え、液晶の種類を変え、配向度の変化を測定した。実験結果は溶質とゼオライトの直接的相互作用と、ゼオライト混合による液晶の状態変化による2次効果で説明できた。 ピリジンではゼオライト添加による構造変化がわずかであるが有意な差として認められた。以上の事実からゼオライト表面と液晶または溶質との間には吸着的相互作用が働き、ゼオライト表面で溶質分子の濃度が高くなり、メタノールの場合には水酸基が、ピリジンではN原子が吸着に関与していると考えられる。
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