研究概要 |
水とニトロベンゼンは、お互いに溶け合わずに接して光学的に透明な界面ができる。両相にそれぞれ、塩化リチュウム、テトラブチル・アンモニゥウム過塩素酸塩を溶かし、各相に電極を漬けて電位を加えると,界面近傍の数ナノメーター領域で電位降下が生じる。この界面に局在する空間電荷領域の電場強度は溶媒分子に誘電飽和を起こすほど大きいと推定される。直線偏光したCWレーザー光を、界面にほぼ垂直に入射させ電位の関数として界面を透過する光の偏光方向が変わることを明らかにした。これは、界面に局在する溶媒分子が電場で1軸方向に配向するために屈折率の異方性ができる事による静的なカー効果である。さらに、フェムト秒短パルスレーザーを用いて、界面分子の回転緩和時間を電位の関数として測定し、緩和時間が電位によって変化することを明らかにした。この事は、界面分子の配向が電位によって変わる事を意味し、バルク内の溶媒分子の配向と界面にある溶媒分子の配向とは大きく異なることを示唆する。界面では、溶液内部のランダムな溶媒分子配向とは異なり、むしろ結晶状態に近い規則的な分子配向があり、これが2次元的なイオンの拡散速度を高めているのではないかと推定できる。この推定を基に水と4-メチル-2-ペンタノンの界面で電気分解を行い、界面に2次元的に局在する金属析出を発見した。水溶液中には、多量の硫酸亜鉛が溶けているので、界面に局在する金属析出は、極めて特異な反応といえる。金属析出が液液界面に局在するアノマリーを解明するために、現在、検討を進めている。
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