研究概要 |
X線吸収分光(XAFS)は規則構造をもたない試料に対しても有効な局所構造解析法で、スペクトル広域におよぶ振動構造(EXAFS)から吸収原子周辺の構造情報が、また吸収端位置・付近に見られる電子遷移ピークから電子的情報が得られる。本研究はこうした元素・結合分離能に加え、さらにサイト分離能をもたせて、より強力な分光手段へ発展させることを意図した。 最新の高輝度X線ビームを照射した試料から発せられるKβ蛍光X線を入射X線に直角・水平に取りこみ、Ge(100)面湾曲結晶で分光し、シンチレーション計数管で検出する縦置き分光器を製作した。それぞれX軸+回転、X軸+Y軸を計算機制御して発光スペクトル、さらに蛍光エネルギーを固定してXAFS測定することにより、サイト選択高分解能XAFSが測定できる。ローランド円を自在に選ぶことで、ブラッグ角を83.6から55.6°までスキャンできる設計にした。さらに結晶部分にはX,Y,Z,α、検出器にはZ,0の微調整を手動で行ない、X線強度を最適化した。本研究費により部品は全て購入したが、経費的理由で分光器本体の最終組み立てのみをやり残した。今後の科研費により、最終組み立てを行なう。 応用するサイエンスとして、継続して研究を行なっているCr/SiO_2とRh_<10>Se/TiO_2の他に、生体中での酸素活性化理解のため、マルチ銅酵素サイトの複雑に制御された反応作用機構を、EXAFSと吸収端スペクトルにより明らかにする準備体制ができ上がった。
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