飛行時間質量スペクトルの非破壊的測定を目的として誘導電荷測定器を製作した。誘導電圧を測定することによって微分型の信号を得た。検出用の電極にグリッドを用いた場合高い時間分解能が得られたが、メッシュに衝突するイオンによって2次電子放出が起こり、ピーク波形が変形するという欠点があった。そこでグリッドを使用しないタイプの検出器を新たに作成したところ、若干の分解能の低下はあったが良好なピーク波形が得られた。この誘導電荷測定器をレーザー蒸発装置に組み込み、炭素クラスターについて以下の成果を得た。 1:この検出器がイオンの速度に依存しないことを利用し、レーザー蒸発法で生成した炭素クラスターイオンの真のサイズ分布を測定し、それが従来の2次電子放出を利用した検出器で得られるサイズ分布より高質量側にシフトしていることを確認した。またレーザーのフルエンスが小さいときに、炭素数数百のクラスターが大量に生成していることを明らかにした。 2:ヘリウムガスでレーザー蒸発生成物を輸送し、その移動時間を測定した。この実験は従来の検出器では困難である。測定の結果、プラズマ中で正負イオンが不均一に局在した状態で輸送されていることがわかった。 3:非破壊であることを利用し、2つの誘導電荷検出器をイオンビーム中に配置してその間でパルスレーザーによる光脱離を行った。C10-の光脱離による信号の減退を観測した。 以上の結果を学会等で発表するとともに1については現在投稿準備中である。
|