含ケイ素芳香族化合物の合成へのターゲットとして9、10-ジシラアントラセンジアニオンの生成とその酸化反応を検討した。9、10-ジシラアントラセンの2量体をLiまたはKで処理すると相当する9、10-ジシラ-9、10-ジリチオアントラセン(1)が生成する。1つは一つのリチウムが二つのケイ素を繋ぐような架橋型をとる構造がもっとも安定な状態となり、それぞれトランスやシス体のジアニオンの生成は見られなかった。1は1、1-ジクロロシランや1、2-ジクロロジシランと反応すると、それぞれケイ素1個、2個で架橋した9、10-ジシラアントラセンがえられる。酸化剤としてジブロモエタンを用いて1を酸化すると、元の9、10-ジシラアントラセンの2量体を生成する。この反応はジアニオンが2電子酸化され、ジシラアントラセンジラジカル(2)を生成し、その2量化したものと見られる。(2)の極限構造式はそれぞれ芳香性を有する9、10-ジシラアントラセンであると考えられる。また、ジフェニルアセチレンの存在では、9、10-位をアセチレンで架橋した付加体がえられてくる。酸化剤として酸化クロム、そのほかの金属塩を用いて行なわれたが、2量体の収率は、あまり高くないことから、ジアニオンからの電子移動が容易に起きていないことが示唆された。一方、11、12-ジシラナフタセンジアニオン(3)は、相当するジハロ体の直接のリチオ化により合成される。ジフェニルアセチレンの存在での3のカドミユウム酸化では、その付加体が得られているが、芳香族系ジシラナフタセンの生成を示す結果は得られていない。
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