研究概要 |
分子性導体であるNi (dmit)_2と18-Crown-6の組合せを中心に、結晶内にイオンチャンネル構造が形成する条件を検討した。Ni (dmit)_2のカウンターカチオンとしてのアルカリ金属イオン(Li^+,Na^+,K^+,Rb^+,Cs^+)およびアンモニウムイオン(NH_4^+)を用いて、錯体形成を行った。この中で、Li^+,Na^+,Cs^+,NH_4^+を用いた場合に、結晶中にイオンチャンネルが形成した。この結晶から、18-Crown-6との間の錯形成定数が小さいイオンを用いると、イオンチャンネル構造が形成しやすいことが判明した。実際に、結晶作製時の溶媒を変え、錯形成定数を変化させるとNa^+,NH_4^+についてはイオンチャンネル構造を持たない結晶を得ることも可能であった。イオンチャンネル構造にならない場合は、カチオンが18-Crown-6に完全に包接され、一種の巨大な超分子カチオンとして振る舞った。現在、これらイオンチャンネル中のイオンの動的挙動についてNMRを用いて解析を試みている。 イオンチャンネル内へのイオンのド-ピング(バンドフィリング制御)は、Cs^+の場合、結晶作製条件を変化させることで可能であった。結晶内のイオンの量は結晶の比重を測定することにより行った。イオンの量すなわち伝導電子の数と結晶の電気物性の関係について詳細な検討を始めている。また、室温においても観察される、2k_Fの反射を用いて、結晶内のCs^+イオンの量をより正確に決めることを計画している。 イオンをLi^+に固定して、15-Crown-5および12-Crown-4の結晶を作製した。前者においては同様にイオンチャンネル構造が出現したが、後者では複雑な超分子カチオンを形成した。今後、さらに多種の組合せにおいてイオンチャンネル構造の発現を目指して、研究を行う予定である。
|